3日目 神は大地を作り、涙の海が生まれ、地には大草原不可避だった。

文春休暇頂きました

悪意にさらされるくらいなら開き直ろう、そう思った私は職場で「昨日は文春休暇を頂きましたぁ」とふざけた声を上げた。
「大丈夫かなぁと心配に思っててん」先輩たちの優しさが身に染みる。
推しくんかっこいいよね、と半年前私に声をかけていた年下の上司はこの日、「えーやだー」とミーハーに顔をしかめた。

これこそが私の恨む無責任な大衆の象徴だ。私はそれを冗談で流したつもりだったが、うるさいと返した私の声は笑っていなかったと思う。

職場はオタクに優しい。職場においている推しの写真を、デスクパーテーションにマスキングテープで貼り付ける。
トイレから戻ってきたとき気付いたが、遠目に見た私の机は、めちゃくちゃヤバい感じがした。

彼女の撮った写真

匂わせ、というキーワードがTLで目についた。彼女の撮った写真は匂わせだとかお花畑だとか叩かれている。

ちゃうねん。

あれ映画の企画で写真展もあったやつやねん。誰が公式企画で匂わせるねん。アホかボケ。
写真は映画内のキーワードのひとつだった。原作小説内ではかなり重要なファクトとしてヒロインは写真を趣味としている。映画ではその趣味は省略されているが、写真は強いキーワードとして印象的に描かれている。原作小説を汲んだ写真展や写真の公開。私はとてもよかったと思っています。

映画を見に行きました

半年前から楽しみにしていた映画を、シュクメルリの友人と見に行った。
いい映画だった。いっぱい泣いたし、オイシさもあった*1

マイナー館系なので早くいっぱい見に行かないと、そう思って私は片っ端から人を誘った。いま思えば、そうやって予定を詰めまくって、一人きりになったときの空虚から逃れたかったんだと思う。

鍋をつつく

帰宅後、妹と父と鍋をつつく。普段楽しげな妹は不機嫌で、いつも不機嫌な父はご機嫌だった。
私は何かを言わずにいられない。
「あのね、好きな俳優さんが不倫報道されてて、今すごい病んでるねん」
何かをコメントしようとする父の言葉を遮って私は何かを捲し立てようとした。嫌いな父に大好きな推しについて言及されたくない。まぁ二人とも不倫野郎だけどな。

「お姉ちゃん、自分が言いたいばっかりで人の言葉を聞く気はないんやな?」妹は冷ややかだった。
鍋と共に日本酒と缶チューハイを流し込んで、上機嫌の父によそわれるがままに鍋も食べまくった。

お気持ち表明タイム

ふわふわしながら相方に電話した。どうでもいいことを捲し立てて、それから寝落ちした。
相方まじごめん。あなたって優しいのね。

*1:意味深

4日目 推しは太陽であり月であり星だ。

肝臓が悲鳴を上げてるっぽい。

出勤。頭にブドウ糖が足りていない、フラフラしている。お腹も痛い。
私は酒癖は悪いが、酒には割と強いつもりだ。昨夜だってそんなに量は飲んでいない。だがこんなに数日連続して飲むことはあまりない。
こういう飲酒スタイルに私の肝臓は弱いのだろう。

ラグナロク感溢れる日常

SNSでつらいニュースが続くと気が滅入るものである。たとえば、311のときであったり、京アニであったり。最近であればコロナウイルスであったり。

推し関係であると危険そうな単語はほぼミュートに突っ込んでいるので、幸い私は、悪意に触れることは殆どない。しかしスクショや伏字だと私の目に触れる。ちょいちょいいらっとする。
デスクパーテーションに建立した推しの祭壇が私の救いだった。
私が好きになった彼は間違いなく本物だ。世論が掌を返そうとも。

私が開き直り始めた

課金額の計算

世の中で推しをクソミソ言う奴らに私は何か勝っていないものだろうか? 私はふと思案した。
そうだ、課金額だ。
有象無象どもは払っていて精々NHKの受信料くらいではないか?
推しの映画、円盤、舞台。そんなに供給があるわけではないし微々たる額だ。
定価ベースで、この時点でおおよそ115,193円。他人に奢った映画代であったり、雑誌代であったり、そのへんはいったん割愛。

微々たる金額である。なぜなら、私がこの沼に来る以前の趣味物品は、1体でもこの値段に及ばなかったから。1年半で人形一体にも満たない課金額だ。

課金した私がいいつってんだから、無課金は黙れよ。
それは私の遠吠えだった。
文句言っていいのは当事者か、私より金払ってる奴か、スポンサー様だけだ。

怒りが感情のウエイトを占めてくる

文春へのリークは本妻サイドの関係者らしい、そんな記事が目に飛び込む。

本妻は家庭に恵まれず可哀想な育ちだからみんな可哀想だと声を揃えているらしい。まぁ全垢で本妻の名前ミュートしてるから世論なんて聞こえてこないんですけど。
リークした関係者は、果たして本妻のことを可哀想に思っていたんだろうか?

推しと本妻には3人の子供がいる。その子たちが物心つくと、否が応でもこの騒動のことを知るだろう。

こんなことしたって子供に可哀想な目に遇わせるだけじゃん。はーーーバカか?

救済

職場の先輩が、この日はスマホ忘れて、一日暇なのだという。
「この数時間あなたは私の推しの悪口を見ないで済んで、そのぶん推しと私が救われたのです」
私は大真面目に、死んだ目で言った。

映画を見に行きました

顔がめちゃくちゃ好きな推しの主演映画を見に行った。同行してくれたのは、私の友人のなかでもっとも優しい子のうちの一人だ。

とてもキラキラしたいい映画だった。
めちゃくちゃ悲しいことが続くが、めちゃくちゃ萌えが私に降り注ぐ。消化が追いつかない。だけど私は滑車を止められない愚かなハムスター、回遊を止めたら死ぬマグロ。

大衆とは無責任だ

路上アーティストが横恋慕を唄う流行歌を演奏している。結構な人数の人だかりができている。
その曲は、推しが主役級で出演した映画の主題歌だった。もっとも、映画より絶対曲のほうがメジャーになっていたが。

無責任な大衆め。推しの顔を見たら不愉快だって言うんだろ? この曲が主題歌になった映画、お前らの大嫌いなそいつが出てるぞ?

その演奏を道路挟んだ向かいで私は顔芸さながらのバカ動画を自撮りした。友人が一緒にいてくれるから私は道化になれる。
しかしこの悲しみから解放されるのなら、いっそ推しぴオタクYouTuberでも始めようかとも思ったよ。いや推しのファンとしての私はお行儀よくいなければならないからそんなことしませんけど。

帰宅後、がらんと静かな脱衣所で、妹は無言で私のバカ動画をリピート再生していた。
ねぇ妹、お姉ちゃんにあたり強くない?

5日目 神は魚と鳥をつくられた。健康のためには魚と鳥を食うべきなので。

心身症状が出る

私は過去、割とヤバめの鬱になっていた時期がある。ちなみにそのうちの一回は、今の推したちによって救われた。私はこれで鬱が治りました、推しは怪しいサプリみたいなもんである。

鬱の時期、私は胃腸をやられていたのだが、5日目のこの日、二日酔い特有の頭のふらふらは解消しており、私はこの腹痛が二日酔いではないと気付いた。

あ、知ってるわこれ。鬱のときの心身症状や。過敏性腸症候群的なやつである。
しかし原因が原因である。恥ずかしすぎる。意地でも仕事は休むまいと決意する。
むしろ仕事してるときの方が気楽だった。余計なものを見聞きしないで済み、そして、考えないで済む。

会社の人が優しい

今日もありがとうございます。
例のミーハー年下上司、最低とかやだぁとか言うわりに、私に優しくしてくれる。
それは思いやりなのか、それとも人材管理の一貫なのか、私にはあまりわからなかった。
「今日はお酒飲まないでくださいね」えっ、優しいかよ。惚れちゃう。

息切れを起こす

ここまでの数日、色んな出来事が立て続けに起こりすぎた。それから逃れるようにゴリゴリ仕事をしたり、やけくそのように新企画思い付いたり、毎日映画見に行ったり。暴飲暴食か、それとも口のなかにチューブつけて流し込まれているのか。色んなこと起こりすぎている。

消化しきれない感情は下痢のようだった。
悲しくて泣きじゃくったり、キレ散らかしたり、新しい供給に萌えたり*1、悲しくて死んだ顔で推しを見つめてたり。
息切れを起こした感じがした。やばい。明日は休みだ、寝よう。

*1:この状況下でも何かしらの供給入ってくるのも逆にすごい

6日目 私は推しの獣であり家畜。

休み

結構寝て、夕方から用事をしに出掛ける。
ファン仲間の友人と会う予定だったが、ご家族が体調不良ということでキャンセルに。
その友人は多忙だったようで昨年1年ほどTLにいなかったが、今騒動で戻ってきて、久々に話すことができた。そんな友人がもう一人いる。

あんた誰?

先に断っておくと、私は人の顔を覚えるのがめちゃくちゃ苦手である。容貌失認の診断下りるかどうかギリギリラインくらいである。
出先の飲食店で知人に会った。はっきり顔がわかったのは3人、あと1人わかるようなわからないような。私は1人で、その4人のすぐ側の席に通された。

私は開き直って挨拶をする。
「どうもーーー推しが文春砲食らって心が死んでまーーーす」
久しぶりに会う人たちに開口一番言うことでもないが、万一彼女らの雑談に名前が出てきたら私は死んでしまうおそれがあった。これ以上悪意に触れたくなかった。

2人の知人は苦笑いしてくれた、それでいい満点正解だ。
1人の知人、私と誕生日が同じでとびっきり可愛い彼女は推しの名字をさん付けで言い、ゲス不倫と笑った。冗談のニュアンスであることは伝わった。荒れてる私のアカウントを見てくれている間柄だから。

ところが残り1人。私が誰だかわからなかった女性。「人間じゃない」と私に言うでもなく溢したのが聞こえた。

推しの下品な濡れ場を無表情にスクショする

深夜ふと、推しの下品な濡れ場がある映画を見たくなった。劇場では2回見たがあまり好きではなかったが、今は課金という自傷行為しか正義を知らない。財布に対する自傷。ありがとうプライムビデオ。
2020年1月22日の午前中までお茶の間好感度バリ高だった推しの濡れ場であればもっと美しいものであるべきなのだろう、しかしこの映画では大概下品なのである。めっちゃ歯食い縛ってるし、相手は遊女だし、中折れしてるし、挙げ句梅毒の膀胱痛だし。

深夜3時、私は無表情にPrtScキーを叩く。

これは知見であるが、ハードウェアアクセラレーションを切れば各種配信サイトのスクショ禁止を突破できる。

めっちゃ歯を食い縛って遊女を対面座位で雑に抱く推しの演技。
相手の女性と致したときもめっちゃ歯を食い縛ってたんだろうか。

7日目 神様、私そろそろ休みたいです。

偏頭痛

私の地域では、昼間の気温が19℃にもなったのだという。急に温かくなった気温に偏頭痛が少し出た。
とりあえず出勤した。時間も経って、推しの話をダラダラ同僚にすることもなくなってきた。

悔しさと呆れという気持ち

この間、ファン仲間の友人ととりとめもないLINEをずっとしていた。萌え語りから愚痴から世の中の噂話まで。
CM解約の話を聞いた。損害賠償請求の話も聞いた。

不倫したこと自体で推しのことは責める気はないが、バカなことしたなぁ、と。呆れの表情だ。例の映画に出てきた仲本工事の気持ちがよくわかる*1

ごめんね、力になれなくて。住宅建ててなくて、車も買わなくて。歯ブラシすら買わなかったよ、ごめんね。

私に金と権力と何かがあるのなら貴方をCMに起用したかったよ、推しぴ……

この一週間を記録しなくては、と思い立った

推しに手紙を書こうとずっと思案していた。ファンレターを丁寧に読んでくれる推しぴ♡それだって私の妄想幻想LOVE PHANTOMにすぎないが。
赤の他人の私だってこんなに心が痛いんだから、推し本人の気持ちは想像に絶する苦しさだろう*2

だから手紙を書きたくてペンを取った。下書きしようとノートに向かった。だめだ、全然言葉が出てこない。

だから私は、このゴチャゴチャした感情を、書き出しておかなくては、と思った。歯医者で奥歯を削られながら何を書こうか思案した。
何か思い立ったら随時追記します。

知見

もし貴方の推しが文春砲に見舞われたら、ネット上の写真やら動画やらの資源が消される前に保存しておくんだ。早く。
私が取り乱して飲酒している間にあっけなく消されたよ、推しが出てるCM動画。

言われて嬉しかった言葉のメモ。

顔がいい

妹の元カレ「いやぁこの騒動でめっちゃ顔見ましたけど、おねーさんの推しさん、やっぱり顔いいっすね!?」
きみ立ち回りうまいね。

スタイルがいい

友「某の熱愛文春記事は、内野も外野も熱愛じゃなくて私服のクソダサさに目がいっちゃって論点擦りかわってしまったのが正直うらやましいです」
我「弊推しだって私服ダサいのに、、、」
友「いやでもスタイルいいから…」
この地獄にあって推しをほめてくれるの、うれしいね。

ここ数日の様子見てて、物理的に距離が近かったらまじで抱きしめにすっ飛んでます

お友達ありがとう。心配してくれて本当にありがとう。

*1:細かすぎて伝わらない比喩

*2:全然ノーダメージのサイコパスでも、まぁ萌えないこともない