4日目 推しは太陽であり月であり星だ。

肝臓が悲鳴を上げてるっぽい。

出勤。頭にブドウ糖が足りていない、フラフラしている。お腹も痛い。
私は酒癖は悪いが、酒には割と強いつもりだ。昨夜だってそんなに量は飲んでいない。だがこんなに数日連続して飲むことはあまりない。
こういう飲酒スタイルに私の肝臓は弱いのだろう。

ラグナロク感溢れる日常

SNSでつらいニュースが続くと気が滅入るものである。たとえば、311のときであったり、京アニであったり。最近であればコロナウイルスであったり。

推し関係であると危険そうな単語はほぼミュートに突っ込んでいるので、幸い私は、悪意に触れることは殆どない。しかしスクショや伏字だと私の目に触れる。ちょいちょいいらっとする。
デスクパーテーションに建立した推しの祭壇が私の救いだった。
私が好きになった彼は間違いなく本物だ。世論が掌を返そうとも。

私が開き直り始めた

課金額の計算

世の中で推しをクソミソ言う奴らに私は何か勝っていないものだろうか? 私はふと思案した。
そうだ、課金額だ。
有象無象どもは払っていて精々NHKの受信料くらいではないか?
推しの映画、円盤、舞台。そんなに供給があるわけではないし微々たる額だ。
定価ベースで、この時点でおおよそ115,193円。他人に奢った映画代であったり、雑誌代であったり、そのへんはいったん割愛。

微々たる金額である。なぜなら、私がこの沼に来る以前の趣味物品は、1体でもこの値段に及ばなかったから。1年半で人形一体にも満たない課金額だ。

課金した私がいいつってんだから、無課金は黙れよ。
それは私の遠吠えだった。
文句言っていいのは当事者か、私より金払ってる奴か、スポンサー様だけだ。

怒りが感情のウエイトを占めてくる

文春へのリークは本妻サイドの関係者らしい、そんな記事が目に飛び込む。

本妻は家庭に恵まれず可哀想な育ちだからみんな可哀想だと声を揃えているらしい。まぁ全垢で本妻の名前ミュートしてるから世論なんて聞こえてこないんですけど。
リークした関係者は、果たして本妻のことを可哀想に思っていたんだろうか?

推しと本妻には3人の子供がいる。その子たちが物心つくと、否が応でもこの騒動のことを知るだろう。

こんなことしたって子供に可哀想な目に遇わせるだけじゃん。はーーーバカか?

救済

職場の先輩が、この日はスマホ忘れて、一日暇なのだという。
「この数時間あなたは私の推しの悪口を見ないで済んで、そのぶん推しと私が救われたのです」
私は大真面目に、死んだ目で言った。

映画を見に行きました

顔がめちゃくちゃ好きな推しの主演映画を見に行った。同行してくれたのは、私の友人のなかでもっとも優しい子のうちの一人だ。

とてもキラキラしたいい映画だった。
めちゃくちゃ悲しいことが続くが、めちゃくちゃ萌えが私に降り注ぐ。消化が追いつかない。だけど私は滑車を止められない愚かなハムスター、回遊を止めたら死ぬマグロ。

大衆とは無責任だ

路上アーティストが横恋慕を唄う流行歌を演奏している。結構な人数の人だかりができている。
その曲は、推しが主役級で出演した映画の主題歌だった。もっとも、映画より絶対曲のほうがメジャーになっていたが。

無責任な大衆め。推しの顔を見たら不愉快だって言うんだろ? この曲が主題歌になった映画、お前らの大嫌いなそいつが出てるぞ?

その演奏を道路挟んだ向かいで私は顔芸さながらのバカ動画を自撮りした。友人が一緒にいてくれるから私は道化になれる。
しかしこの悲しみから解放されるのなら、いっそ推しぴオタクYouTuberでも始めようかとも思ったよ。いや推しのファンとしての私はお行儀よくいなければならないからそんなことしませんけど。

帰宅後、がらんと静かな脱衣所で、妹は無言で私のバカ動画をリピート再生していた。
ねぇ妹、お姉ちゃんにあたり強くない?